研究概要 |
強相関電子系の典型例として銅酸化物高温超伝導物質を考える。銅酸化物高温超伝導物質は、母物質であるモット絶縁体に正孔をドープしたものである。この物質に関する温度Tと正孔ドープ量δとで描かれるT-δ相図において、超伝導遷移温度T_cより高温側に異常金属相と呼ばれている領域が存在し、そこでは同物質は様々な異常な物性を示す。 我々のシナリオによれば、異常金属相の高温側では、超交換相互作用J_sによって誘起された反強磁性揺らぎが主役を演じ、低温側では、超伝導揺らぎとそれによって誘起されたpseudogapが主役を演じる。主役の演じ手の入れ替わりが、異常金属特性を決めている。このようなシナリオを実証するための予備的考察の結果は、既に公表した.(Phys.Soc.Jpn.68No.8(1999)2506-2509)。 今回は、先の考察の発展として、これまでの近似手法の不十分な点を改良し、結果を確たるものにすることを目指した。これまでの取り扱いの中、反強磁性揺らぎに関する部分が、必ずしも十分ではなかったので、それを改良した。実際にRPA近似をFLEX近似に置き換えた計算を行い、実験結果との比較をより定量的に行えるようにした。また、上述のシナリオにおいては、超伝導揺らぎの擬2次元性及び強結合性が重要な役割を果たしていると考えられており、それらを明らかにするため、より簡単な模型を用いた解析的な考察を行った。 これらの考察と並行して、強相関電子系のもう一方の典型例であるCe,Yb,U等を含む金属間化合物(重い電子系と呼ばれる物質)の示す異常金属特性(特に、非Fermi液体的振る舞い)についての考察を行った。
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