1.高温超伝導体La_<1.9>Sr_<0.1>CuO_4エピタキシャル薄膜の成長 SrTiO_3の(100)面上に基板温度730-770℃において(001)面La_<1.9>Sr_<0.1>CuO_4薄膜のエピタキシャル成長を達成した。薄膜の転移温度T_cは29Kで抵抗率の温度依存性は金属的な振る舞いを示した。 2.高温超伝導体薄膜へのAu電極接触抵抗低減 La_<1.9>Sr_<0.1>CuO_4エピタキシャル薄膜の電極形成表面にArイオンスパッタクリーニング処理後、その場Au蒸着、さらに高速熱処理を施すことより接触抵抗が10^<-5>Ωcm^2程度が達成された。 3.高温超伝導体La_<1.9>Sr_<0.1>CuO_4エピタキシャル薄膜上への微小メサ形成とトンネル特性 La_<1.9>Sr_<0.1>CuO_4エピタキシャル薄膜上にフォトリングラフとArイオンミリングにより平面寸法10μmx10μm厚さ13・14nmの微小メサ構造を作製した。このメサは格子定数で10単位分、CuO_2層で20層に該当する。接触抵抗は0.5・1Ωであり、11.5Ωcmおよび5.8Ωcmに対応し、c軸配向微小メサ構造が実現していることがわかった。得られたメサのc軸方向の電流電圧特性は抵抗短絡型ジョセフソン接合特性に近く、トンネル型特性は見られなかった。 4.ビスマス系高温超伝導体固有ジョセフソン接合を用いた短パルストンネル分光 高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>のイントリンシックジョセフソン接合を利用した短パルス固有トンネル分光により超伝導ギャップおよび擬ギャップの大きさを評価した。特に不足ドープ領域では超伝導ギャップと擬ギャップが異なる位置に観察された。この実験結果は超伝導揺らぎのモデルを否定するものと理解することができる。 5.短パルス固有トンネル分光法のエネルギー測定領域の拡大 正弦波と組み合わせ連結パルス波形を用いた短パルス固有トンネル分光法で電界降伏による試料破壊が全く見られず、最高電圧が1接合当たり200mV以上まで可能となった。これにより、Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>のトンネルスペクトルにおいて、超伝導ギャップよりも高い位置にもうひとつのピークが存在することが明らかになった。
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