研究概要 |
平成14年度は3年間の研究のまとめの年に当たり、相関の強い電子系の理論の確立を目指した。それは理論の質を高めることと、適用対象を拡大することに依る量的な発展であった。 1.質的発展 主に博士課程3年の野村君によって計算され発展させられた。オンサイトのクーロン相互作用による摂動展開が4次まで計算され、摂動理論の正当性が確立されたことである。特にd-波の場合は非常に収斂性が良く、3次までの摂動計算の結果と4次までの結果とはほとんど違いが無く3次までの摂動計算が信頼できることがわかった。 P-波のスピン3重項の状態に対しては収斂性がよくないことがわかった。しかし、もっとも寄与の大きい電子同士の散乱項を無限次数まで集める(梯子近似とか金森近似と呼ばれる)と性質の良い結果が得られ、3次までの摂動計算の結果を変えないことがわかった。こうして強相関系の超伝導の対称性と転移温度を求める理論が確立したと考えている。 2.量的発展 これまで摂動展開は銅酸化物、有機導体のスピン1重項、Sr2RuO4のスピン3重項を導き実験を再現することが知られてきた。今年度は超伝導の宝庫である重い電子系に適用し、その超伝導機構を説明した。CeCu2Si2,CeIrIn5,CeCoIn5,CeIn3,UPd2A13のd-波対の超伝導、UNi2A13のP-波がミクロに導出された。 以上のように相関の強い電子系の超伝導理論が摂動展開で可能であることを具体例で示した。後は閉じた理論を完成することである。
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