研究概要 |
立方晶の結晶構造をもつ希土類六硼化物はCeB_6をはじめとして,四重極子,八重極子モーメントが様々な異常を引き起こすことが知られており,古くから盛んに研究されてきた物質群である。中でもCeB6は奇妙な反強四重極秩序を示す物質として有名であったが,異常を引き起こしていたのが反強的八重極子相互作用であることがわかったのはごく最近のことである。しかし,八重極子モーメントの実態究明にはほど遠く,四重極子モーメントについても詳しいことはわかっていない状況にある。本研究ではこのような多重極子モーメントが磁気秩序とどのような関わりをもつかを調べ,その本質を明らかにすることを目的としている。CeB_6における八重極子モーメントが反強四重極秩序,磁気秩序とどのように関わりあっているかを調べるため,Ce_xR_<1-x>B_6(R=Nd,Gd)単結晶について核磁気共鳴の実験を行い,R添加により新しく4番目の相(IV)が出現することを見出し,スピンー格子緩和率の測定から,IV相のエネルギー分裂に関する知見を得た。また,CeB_6の反強四重極秩序相,反強磁性秩序相の核磁気共鳴の実験結果を定量的に解析し,八重極子モーメントからの寄与と反強四重極子モーメントからの寄与の分離に成功した。また,先に世良が予想していた磁場誘起反強磁性モーメントの奇妙な温度依存性が青山学院大との共同研究である中性子散乱の実験で実際に確認され,CeB_6における八重極子モーメントがいかに奇妙な異常を引き起こしているかを明らかにした。単純な反強磁性秩序を示すと思われていたNdB_6が核磁気共鳴の実験から四重極子相互作用が重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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