研究課題/領域番号 |
12640354
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
浅野 貴行 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (00301333)
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研究分担者 |
網代 芳民 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (00025438)
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キーワード | 幾何学的 / 競合系 / スピンダイナミックス / 量子効果 / パイロクロア構造 / カゴメ格子 / 三角格子 / 交替スピン |
研究概要 |
頂点共有型四面体格子は、スピネル、パイロクロール、ラーベス相等の磁気格子に見られるものであるが、これまで余り多くの研究はない。そこで、今年度は、特に、ラーベス相であるYMn2の微視的研究を行った。 ラーベス相であるYMn2は、強いフラストレーションにより、局在モーメントの発生が抑えられているが、100Kで正方晶に歪み大きい局在モーメントを生じる。この系を3%のScで置換することにより、フラストレートした状態を低温まで安定化できる。この状態で1.3mBという大きいスピン揺らぎがあるが、70mKまで磁気転移がないことがNMRより分かっている。また、一部のMnをAlで置換すると立方対称性を保ったまま格子が膨張し局在モーメントが発生することも知られている。 この系のmuSRを測定したところ、スピンの凍結が2.5Kで見いだされた。Mnの2%をAlで置換すると緩和率のピークは、冷却時には10Kで、加熱時には20Kで見られるのに対し、初期非対称度は10%置換の試料と同じ40Kから減少する。緩和率のピークは、平均の凍結温度に対応し、初期非対称度の異常は最高の凍結温度を示すので、この結果はMnモーメントの周りの局所的な配置により凍結温度が非常に変ること、Alの少ない領域でも凍結温度は非常に大きく変わることを示している。このこととNMRで転移が観測されなかったことを考え合わせると、Y0.97Sc0.03Mn2で見いだされたモーメントの凍結は、Sc原子や入射されたmu+のような格子の欠陥によって誘起された局所的な磁気分極の凍結であり、大部分のスピン揺らぎは、低温まで続き、いわばスピン液体状態にあると結論される。
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