ゼオライトは、シリコン、アルミ、酸素によるゼオライト骨格からなり、ナノメートルサイズの規則的に配列した空洞を有している。この空洞内に多種のガスやアルカリ金属を吸蔵して興味深い性質を示す。LTAと呼ばれるゼオライトでは、カリウムの吸蔵により低温で強磁性的性質が出現する。本研究は、この磁性発現の機構を明らかにすることが目的である。 今年度の成果・結果を以下に整理する。 1.昨年度に続き、Kを吸蔵したK型LTAの相図を調べた。Kの吸蔵量の増加により質量密度波が発生するが、X線回折実験を高温まで行い、質量密度波はKが結晶から抜け出す高温まで持続することが示された。 2.Kを吸蔵したK型LTAにおける強磁性的磁化の出現機構を明らかにする目的でμSR実験を行いその解析を行った。強磁性が出現する二種類の試料について実験した。ゼロ磁場μSRの温度依存性から自発磁化の出現が確認された。スーパーケージ内に磁気モーメントが球対称の分布で存在していると仮定して、可能な磁気構造を議論した。Si-NMRの解析結果と同じ、スピンS=0と1の二倍周期の構造で説明できそうであるが、より詳細な検討が残されている。 3.Na型FAUゼオライトにKを吸蔵させた試料を作製し、X線回折実験を行い、格子定数の吸蔵量依存性を求めた。供給されたKのS電子が結晶内で複数のアルカリイオンと共有されていることを示唆する結果が得られた。 4.Na型FAUゼオライトにNaを吸蔵させた試料を作製し、X線回折実験、磁化測定、NMR実験を行った。興味深い実験結果が得られ、現在解析が進行している。
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