研究概要 |
低温で反強四重極、反強磁性秩序を示す希土類化合物RB_2C_2(R=Dy, Tb, Gd)の磁場下におけるX線回折実験を前年度に引き続いて行った。DyB_2C_2では、6T以上の磁場を正方晶結晶のa-軸方向にかけるとゼロ磁場の結晶構造の約2倍周期の構造が部分的に誘起されることが判明していた。この結晶構造変化は低温の反強磁性、反強四重極の秩序領域のみでなく、高温の常磁性領域まで観測されていた。今年度は、更に磁場を[110]方向にもかけて測定を行った。また、同様な四重極、磁気構造を持つTbB_2C_2についても実験を行った。その結果、DyB_2C_2のみならず、TbB_2C_2においても、磁場をかける方向に関係なく、また、秩序温度以上の温度領域で、約6T以上において磁場誘起結晶構造変化が観測された。これらの構造変化が四重極秩序と関連するものかどうかを調べる目的で、軌道角運動量を持たないGdB_2C_2の磁場に対する結晶構造の変化を調べたが、DyB_2C_2およびTbB_2C_2と同様、6T近傍で同様の結晶構造変化が見られた。以上に結果から、DyB_2C_2,TbB_2C_2,およびGdB_2C_2で観測された磁場誘起結晶構造変化は、四重極秩序と関係なく引き起こされるものと判明した。この構造変化の起源はまだはっきりしないが、Kasuyaが提唱しているexchange pair Jahn-Tellerの機構による可能性もあると考えられる。
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