本年度はのμSR研究においては、Bi-2212系及びY-123系の試料を用いた測定を行った。各系において、ホール濃度がCu1原子にたいして約1/8程度で、更にZn等の非磁性不純物でCu原子を一部置換した試料に関する測定を行った。ホール濃度が異なった試料をいく種類か準備し、ゼロ磁場中及び磁場中でのμSRを繰り返した。その結果、ホール濃度が1/8近傍においてのみ、高温超伝導が異常に抑制されるとともに、Cuスピンの動的揺らぎが特異的に抑制されることを発見した。このことから、「1/8問題」として知られているこの異常な超伝導の抑制とCuスピンの揺らぎの安定化が密接に関係していることが判明した。また、この効果は、Bi-2212系においてもY-123系においても同様であったことから、「1/8問題」は、結晶系によるものではなくて、CuO_2面固有の電子状態によって発生するものであることが確認できた。 高圧セルは、打ち込むミュオン通過できる程度のセルの厚みを予想し、デザインを行った。英国のRIKEN-RALミュオン施設で得られる最大速度のミュオンを用いることを仮定し、銅材質のセルで厚みが10mmであるセルをデザインし製作中である。
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