(1)高温超伝導体のSR研究 2002年度においても、La系高温超伝導酸化物のストライプの動的性質に関しての研究を継続した。ホール濃度がCu原子あたり1/8近傍を中心に、オーバードープ領域までホール濃度を変化させ、Cuを非磁性不純物Znによって置換した場合にストライプ相関がどのように安定化するかどうかを調べた。その結果、オーバードープ領域においては、非磁性置換効果が抑制されてくることが判明した。更にホール濃度を更に幅広く変化させて、動的ストライプの安定化する兆候をμSRの緩和率の変化から捉えることを試みた。これまでの結果同様に100K近傍の高温側から動的ストライプの安定化が観測されることがわかったが、オーバードープ領域においてはその効果が強く抑制されていることが明確にされた。この動的ストライプの安定化が観測されだす温度を電気抵抗の測定結果と比較したところ、キャリアーの局在化する温度が、本研究から得られた動的ストライプの安定化が観測されだす温度に非常によい一致を示し、電荷の自由度とスピンの自由度が相関していることを明確に示すことができた。これは、ストライプ相関の根本である、電荷とスピンの結合を強く指示する結果である。 (2)高圧μSR測定開発 2002年度においては、昨年度に作成した圧力セルの圧力校正の準備及び試験を行った。圧力印加用のプレスの準備及び圧力媒体の選定を行った。圧力媒体は通常のフッ素系オイルを用いず、有機溶媒系の圧力媒体を用いることを決定した。圧力を直接測定するために圧力セルに入れる鉛や錫等の超伝導体線を選定し、測定系の整備を行った。低温測定のために低温装置の整備及びセル設置用の試料棒の設計を行った。今後、低温での圧力校正を行った後、よく調べられた高温超伝導試料をセルに封入し、実際にミュオンビームを用いた状態でのμSR信号強度の測定を行う予定である。
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