(1)酸化物高温超伝導体のμSR 当該研究期間において、La系・Bi2212系・Y系の1/8問題を中心として、電荷とスピンのストライプ相関の動的性質に関してのμSR研究を行った。La系においては、ホール濃度がCuスピンに対して約1/8近傍における非磁性不純物効果の測定より、1%程度の少量の非磁性不純物は動的スチライプ相関を静的に安定化させ、それ以上の多量の置換量においては、ストライプ相関自身を破壊することを明らかにした。また、100K近傍における精密測定からは、動的ストライプ相関の安定化が始まると期待できる、動的スピンの揺らぎのスローイングダウンを検出した。その検出温度が電気的キャリアーの局在化する温度にほぼ一致していることから、動的スピンの揺らぎとキャリアーの局在が相関を持っていることが明らかになった。Bi2212系及びY系の測定からは、非磁性不純物を少量置換することによって、ホール濃度が1/8近傍においてのみ特異的にCuスピンの揺らぎの抑制が抑制される効果を発見した。この結果は、Bi2212系及びY系においても動的ストライプ相関が存在している可能性を示した。 (2)高圧μSR 当該研究期間において、高圧下でのμSR用の高圧セルの設計・開発を行った。ベリリウム銅を材質に選定し、現有の低温装置に合致できる構造をとりつつ、目標値である1MPaの圧力を印加できる構造を実現した。試験用高圧セルを製作し、ミュオンビームを用いて実際の測定に利用可能かどうかの総合判断を行い、設計値の性能が出ていることを確認した。今後、低温での圧力校正を経て実際の測定へと投入する予定である。
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