研究概要 |
パルス誘導光散乱法を用いて、過冷却液体のガラス転移を決定づける密度ゆらぎの時間相関と空間相関を同時に決定することにより、ガラス転移機構に関わる時空間スケーリングの可能性を追求することが本研究の目的である。パルス誘導光散乱は実時間測定法の1種であるから密度ゆらぎの時間相関を直接捉えることができ、しかも散乱べクトルqを変えることにより(測定する長さの"物差し"をかえることになる)、密度ゆらぎの空間相関をも得ることができるという長所をもつ。 平成12年度は、液晶回折格子装置を当該補助金で購入し、これを現有システムに組み込み、これまで手動で行っていたqの変更をコンピュータ制御で自在に変えことができるような新しい光散乱システムを完成させた。そして、ガラス形成物質であるD-ソルビトールを用い、qをq_1=1.3×10^4,q_2=8.6×10^3,q_3=3.7×10^3,q_4=8.3×10^2cm^<-1>と次々に変えて密度ゆらぎを測定することに成功した。その結果、密度ゆらぎの緩和時間がガラス転移温度Tg=266Kよりもかなり高い温度Tpで最長となり、しかもTpがq依存性を示すことを発見した(q_1,q_2,q_3,q_4のときそれぞれ309,305,299,288K)。この現象は密度ゆらぎの空間相関を特徴づける長さのスケールξが存在し、それが温度の低下に伴って長くなるが、Tpで波長∧=2π/qと等しくなることで解釈できる。結局、本実験では密度揺らぎを直接捉えた上でξの存在を確定したことになる。
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