非線形力学系と無限量子系の非平衡状態及び関連トピックスについて研究を行い、以下の結果を得た。 (1)非線形力学系の統計的振舞い(a)双曲力学系の非平衡統計力学:双曲力学系の一つ、多重パイこね変換の非平衡定常状態について、Gaspardらの提案した粗視化エントロピー生成と相対エントロピー生成を比較し、スケーリング極限では、互いに矛盾がなく、かつ熱力学とも両立することを示した。(b)非双曲力学系の統計的性:区分的線形な間欠性カオス写像において、相関関数の多項式的緩和が分布関数の発展演算子の連続固有値で扱えることを明らかにした。また、写像によって生成される時系列が非定常な場合に現れる規格化できない不変測度を確率測度に対して定義される発展演算子でも捉えることを示した。さらに中立固定点を持ち、通常より速い拡散(平均二乗偏差が時間のa乗(a>1)に比例)を示す写像において、その異常拡散が分布の時間発展演算子の1に近い固有値で特徴付けられることを見出した。(2)無限量子系の非平衡状態(a)C*力学系の非平衡統計力学:C*代数の方法を用い、一次元量子導体において、運動方程式の解から非平衡定常状態を厳密に構成し、Landauer公式、相対エントロピー生成の正値性、Onsagerの相反関係などを示した。さらに、Ruelleらに従い、L'-漸近アーベル性をもつ系について、非平衡定常状態の存在、Gallavotti-Cohenの揺動定理の成立、Zubarev-MacLennanの非平衡アンサンブルとの同等性などを示した。(b)量子開放系のデコヒーレンス制御:量子開放系では環境場の影響により系のコヒーレンスは失われる(デコヒーレンス)。3準位系を例に、非理想的なDynamical Decoupling制御、量子ゼノン制御を調べ、非理想的な条件下では、制御によりかえって制御効率が悪化することを見出した。
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