研究概要 |
1.再帰直交多項式展開法の第一原理計算への応用 再帰直交多項式展開法を強結合LMTO法と組み合わせることで巨大な不規則系の電子構造を第一原理的に計算する手法を開発した.また,この方法をbcc Feに適用し電子状態密度を計算した.計算から得られた状態密度は,従来のk-空間に置ける方法と比べて遜色のないものであった.さらに液体および非晶質Feに適用し状態密度を計算することで巨大な不規則系の第一原理計算に対してこの方法が有効であることを示した. 2.並列処理環境の構築 既存のワークステーション4台にメモリー増設を行い,高速ネットワークを介してクラスタリングすることで,並列処理環境を構築した.NFSによりファイルを共有するとともに,フリーの並列処理インターフェイスであるMPICHを導入し,MPIを用いたプログラムの並列処理が行えるようにした. 3.プログラムの並列化 再帰直交多項式展開法は,適当な状態ベクトルに対してハミルトニアンを逐次的に作用させていく方法であり,ベクトル化ならびに並列化が容易なため,最近の並列型スーパーコンピュータに適したアルゴリズムである.そこで実際に再帰直交多項式展開法のプログラムを並列化し,その高速化率を評価した.その結果4CPUまではほぼ線形に高速化され3.7倍の高速化率を得た. 4.固有ベクトルの解析 巨大な行列の任意の固有値に対する固有ベクトルを再帰直交多項式展開法により効率的に計算する方法を開発した.この方法では,計算時間はシステムサイズNに比例し,Nの自乗に比例する従来の逐次法に比べはるかに高速に計算できることを示した.固有値と固有ベクトルが同時に同じアルゴリズムで計算できることもこの方法の大きな特徴である.
|