液体・溶液の動的性質を研究することにより、凝縮系での緩和現象の一面が明らかになった。具体的には以下の成果を得た。 1.動的密度汎関数法は、古典液体・溶液の動的性質を研究するのに、広く使われてきたが、これまでその微視的基礎は明確ではなかった。そこで射影演算子法を使って、リュービル方程式から導出した。 (1)まず、密度場をまったく粗視化しない力学変数として、通常の非線型ランジュバン方程式を使うと、動的密度汎関数法と似た式が得られた。しかし、自由エネルギー汎関数が違う。さらにこの自由エネルギー汎関数をあらわに求めたところ、相互作用がそのまま含まれ、近似の精度は良いが、計算上困難があることが分かった。 (2)密度場を非平衡分布で平均したものと考え、川崎・Gunton射影演算子を使ったところ、自由エネルギー汎関数の定義が、動的密度汎関数と厳密に一致する式を得た。さらに、平均からのずれに対して新しい式を導出することが出来た。これらの結果から、動的密度汎関数法の導出における近似が理解でき、適応範囲が明らかになる。 2.動的密度汎関数法について、この3年間に限定せず、広く文献を調べまとめた。いくつかの文献で見られる密度汎関数法の定式化に関する混乱を整理し、厳密でかつ簡潔な定式化を行った。また、動的拡張について問題点を明確にし、その微視的基礎付けについて、何が重要かをはっきりさせた。そうした後で、液体・溶液への応用をまとめ、この課題で3年間に得られた成果がどのように位置づけられるか明らかにした。 3.もう1つの成果であるガラス転移について、これまでの研究と比較検討し、まとめた。
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