1.動的密度汎関数法の分子液体への拡張 分子液体の計算機シミュレーションで、よく使われる相互作用点モデルに、動的密度汎関数法を拡張した。相互作用点密度場の自由エネルギー汎関数が得られれば、相互作用点密度場の時間変化が完全に計算できるよう、定式化した。この自由エネルギー汎関数は、RISM等の平衡系の多くの理論から計算できる。 2.溶媒和における分布の幅のダイナミックス 最近、西山と岡田は、溶媒和ダイナミックスで、時間分解蛍光スペクトルの幅の緩和がピークより遅いという、実験結果をえた。これまでの理論は、ピークと幅は厳密に同じ緩和を与えるので、この結果は説明できない。そこで、この現象を理解するために、分子の回転緩和だけでなく、密度場の非線形効果を取り入れた簡単なモデルをつくり、幅のダイナミックスを計算した。その結果、密度場の緩和が充分遅ければ、幅の緩和がピークより遅くなることがわかった。現在、このモデルが正しいかどうかを調べるために分子動力学シミュレーションを計算している。 3.過冷却液体とガラス転移の研究 (1)トラッピング拡散モデルの微視的な基礎付けをした。化学反応の理論を使い、ジャンプ速度の分布を微視的に導いた。その結果、粒子の運動に速度の違う緩和がある時、ジャンプ速度が分布することがわかった。また、その分布の具体的な形を求め、速度の小さいところで、べき乗分布になることを見いだした。 (2)加えて、ガラス転移における比熱の異常を研究した。比熱の激しい変化を説明するために、非平衡系における比熱を新しく定義し、いくつかのモデル系で計算した。 4.配位数に対する粒子の大きさの効果 剛体球系を積分方程式を使って調べた。無限希釈した溶質剛体球に2種類の大きさの違う剛体球を溶かし分布関数を計算した。
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