量子ドットなど量子デバイスを実現する為には、半導体表面にナノメートルの微細加工をする必要があり、人為的手法では限りがある。そこで結晶の歪みが生み出す自発的な形態形成を利用することが試みられている。 結晶表面に吸着原子やステップなどの表面欠陥があると、それらは表面に応力を及ぼし、表面を歪ませる。また、歪みを介して表面欠陥の間に相互作用が生じる。これまでは連続弾性体を用いた計算がなされているが、より微視的に結晶成長の原子過程まで理解するためには、どの位小さなスケールまで連続弾性体模型が使えるのかを検証しなくてはならない。そこで平成12年度は、(1)歪みを考慮した結晶の格子模型を構築し、(2)この格子模型の表面に欠陥を導入し、その間のエネルギーを計算し、(3)連続体模型による結果と比較した。 二次元系に対する結果では、表面上の吸着原子の間に働くエネルギーが距離の逆二乗に比例する長距離反発力であり、距離が3原子以上離れると連続体模型で良く表されることが分かった。ステップの場合も逆二乗の長距離反発力となることは連続体の解析と合致するが、その大きさは5から10倍も違う。これは、連続体近似の計算では段差のある表面に対する弾性グリーン関数が解析的に分からないため、平らな表面のもので置き換えていることによる。また、結晶表面上の単層島の淵にあるステップ間相互作用は、端数冪に従っているように見えた。多段の島が作られるとき、上段の層は下段の層の中心付近に配置したほうが歪みエネルギーが小さいことが分かり、ピラミッド状の島の形態が歪によることが理解できた。 吸着層の不整合度の効果については来年度の課題である。
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