半導体表面で結晶の歪みが生み出す自発的な形態形成を利用して、ナノメーター・スケールの微細加工をつくる試みがあるが、その基礎的理解のためのモデルを構築している。 昨年度導入した「歪みを考慮した結晶の格子模型」をヘテロエピタキシャル成長の状況に適用した。つまり、基板結晶とは格子定数の違う原子を基板表面に吸着させて吸着島を作り、その島の平衡形を界面エネルギーや歪みエネルギーの関数として調べ、相図にまとめた。 歪み効果がなくても、界面エネルギーが吸着原子間の凝集エネルギーと異なれば、吸着原子は基板表面を濡らさず、島を形成する。マクロな体系に対してはウルフの作図法でその平衡形が定まり、基底状態では完全なファセットに囲まれた多面形となるはずである。しかし、少数の吸着原子からなる有限サイズの島では、完全なファセットが作れず、形に多様性が生じる。これに歪みの効果が加わると、一般にその相図は非常に複雑になる。一般的に分かったことは、歪みを入れれば島はアスペクト比(=高さ/幅)の大きな、高い島となろうとする。これは、基板から遠ざかるほど、格子不整合性の制限から解放され、本来の格子間隔に戻って、歪みエネルギーを緩和させられるからである。ただし、本年度の研究は基盤が非常に固くて変形しないという状況を設定している。来年度はグリーン関数を用いることにより、基板歪みも取り入れた計算を行う予定である。 その他、互いに歪を介して反発しあっているステップのある微斜面が、成長または昇華中に示す表面不安定性を解析的、数値的に調べた。
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