研究概要 |
有限格子法は2次元統計系の高温展開・低温展開を計算する上で最も有効な方法であるが,3次元系ではダイアグラム法を圧倒するものではなかった.平成12年度に研究代表者・有末は北里大学・藤原俊朗助教授と共同で,有限格子法の新しいアルゴリズムを開発した.このアルゴリズムを用いれば,イジング模型の高温展開をダイアグラム法や従来の有限格子法に比べて圧倒的に高次まで計算することが可能となる.実際有末は藤原俊朗と共同で,平成12〜14年度にこのアルゴリズムを用いて3次元イジング模型の比熱を,温度の逆数について従来の26次から50次にまで拡張した.また,有限格子法のこの新しいアルゴリズムを応用して,3次元イジング模型の帯磁率の高温展開を従来のダイアグラムによる方法で求められた温度の逆数の23次から、32次にまで拡張することに成功した. 平成15年度は,この新しいアルゴリズムを応用して,新たに3次元イジング模型の2次モーメント相関距離を;温度の逆数について32次までまで求めた.計算は平成12年度・13年度に購入した計算機と京都大学基礎物理学研究所の計算機・筑波大学計算物理学センターの超並列計算機を併用して実施した.新しく得られた相関距離の級数を14年度に得られていた帯磁率の級数と組み合わせることで,3次元イジング模型の相転移点を7桁の精度で決定することが出来,最新の大規模数値シミュレーションの結果が正しいことを示した.また,この模型の帯磁率の臨界指数を5桁の精度で求めることが出来た.この値は,他の様々な手法によるこの臨界指数の計算に比べて最も精度が高いものである.
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