本研究は、高分子ゲルが示す多様な挙動について、メゾスケールの領域から、ゲル内部の架橋構造の不均性と関連づけて、その物理化学的特性・ゲルの体積相転移現象を明らかにするものとして計画された。研究対象としては、PNiPAMゲルを第一の対象として、そのゲル微粒子の感熱応答挙動をゲルサイズとの比較からキャラクタライズすることを目的にした。単分散性の1ミクロン程度のゲル微粒子を作成することを目標に、各種の作成法を平成12年度に引き続いて試してきたが、現段階では最適な界面活性剤、作成法を確立するところまでは到達していない。(1)しかし、アクリル酸共重合系では、ちょうどそのサイズ程度のものを得ることに成功し、その膨潤収縮挙動を解析したところ、膨潤状態では等方的な球状のゲル微粒子が収縮状態では非等方性の形状に変化するという特異な挙動を示すことがわかり、この程度のサイズにまで発達したゲルでは、その内部に不均一構造を持ち、収縮する際に空間的非一様性が発現したものと考えられる。これはゲルの不均一性の重要性、ならびに、メゾスケールからの観測の重要性を示すものである。(2)また、ゲル微粒子を用いることにより、その音速測定からゲル中での水和状態を定量的に評価することが出来た。PNiPAMゲルでは、モノマーあたりの水和数が膨潤状態では約6なのに対し、収縮状態で約2にまで減少していることがわかった。この変化は、疎水性相互作用がより強いPNnPAMでは、変化幅はさらに顕著になり約11から約5にまでなる。これは理論的な予測とほぼ対応する結果であることが分かった。(3)この研究過程で、生体高分子ゲル(フィブリンゲル)のゲル構造・ゲル形成過程が直接観察できるのではないかという観点から、ゾルゲル転移の光散乱による解析を行うと同時に、形成されたゲルの共焦点顕微鏡観察を行った。その結果、ゲルの架橋構造を実際に直接観察することに成功した。
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