本研究では、直接数値計算を用いて大規模秩序渦と乱流場との相互作用を調べた。一様等方性乱流場(Re_λ=126)を減衰乱流の数値計算で用意し(計算領域4π^3、解像度256^3)、循環T(2種類)の秩序渦(Lamb-Oscen渦)を一様等方性乱流場に埋め込み、数値計算を再スタートした。計算データから渦度・速度場を可視化し、秩序渦と乱流場との相互作用のメカニズムを解明した。秩序渦が4〜6回転する間に初期乱流場の微細渦が巻き収られ、ほぼ軸対称的な渦輪構造が形成される過程が示された。また、乱流場との相互作用により、秩序渦の渦核内に負のω、の値が生じる軸対称変形や、渦軸の傾き(屈曲変形)、さらには渦断面の歪み(楕円変形)など、各種の渦波(Kelvin波)が励起されることも分かった。統計的性質を調べるために乱流場を20種類用意し、集合平均を取って統計解析を行った。その結果、軸対称な軸方向速度相関Φ_<rr>(m=0)では渦中心に軸対称波が確認できた。循環が大きな秩序渦の表面より少し外側の領域で相関が成長する領域(Blocking effect)が存在するが、循環が小さな場合にはこのBlocking effectは見られなかった。m=Oの軸対称半径方向速度相関Φ_<rr>は乱流場のworm状の渦が秩序渦周りに巻きつく領域で、およそt^2に比例する相関の増加が見られ、線形理論の予測と一致した。渦核内では非軸対称軸方向速度相関(m=1)の値が時間に対して激しく変動するが、これは屈曲変形に対応するものであり、Blocking effectの解消とともに秩序渦の崩壊がもたらされる主因となることが見出された。
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