数百年にわたる長い歴史があるにもかかわらずエンジンの基本的理解の方法はカルノー以来何の進展も見られない。エンジンを理解することは物理学の基本的問題の一つである。ここで我々が提案する熱音響効果に基づく新しいエンジン模型は従来のエンジンの理解を大きく変え、さらに可動部の全くない冷凍機が可能になることを示す。 音波と壁との熱的相互作用により、音の伝播方向に沿った温度勾配によって音のエネルギーが増幅されることがある。このデバイスを光レーザー(LASER)に対応させSATEC(Sound Amplification by Thermoacoustic Energy Conversion)と呼ぶ。熱音響効果を利用して音圧は平均圧の10%を容易に達成することが出来る。圧力変動を作り出す汎用エンジンの可動部(ピストンやヴァルブ)を音波に置き換え、全く可動部のない新しいエネルギー変換器が可能となる。宇宙空間での使用や廃熱を利用した環境負荷の小さい(成層圏でのオゾン層を破壊するフロンガスや地球温暖化に寄与する炭酸ガスの排出を必要としない)デバイスが可能となる。 本研究の前半部はこの現象(エンジン)をを非平衡の観点から捉え、多くの実験結果に基づきエンジンを支配する新しい(非平衡)熱力学的法則・原理を探索する。流体を平衡状態から遠ざけていく時、いくつかの不安モードの出現を伴う。自然はどのようにして多くの不安定モードの中から特定のモードを選択するのであろうか?我々は自然法則として「エントロピー流増大を最も少なくするモードが優先される」を提案する。対流系などのような他の非平衡系に適用されることを確信する。後半部はこれらの結果に基づいた新しい冷凍機模型の試作提案である。ループ型パイプを利用して進行波を励起しその音波を利用して熱をくみ出す装置である。数少ない極めて単純な部品から構成されており、外部から印加された230Wの熱によって室温から-27度までの低温生成に成功した。近い将来、高温超電導体の冷却に応用される可能性がある。
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