研究概要 |
ゲルが貧溶媒に浸され,体積相転移する過程において美しいパターンが形成されることが知られている.本研究においては,このようなパターンが形成されるメカニズムを明らかにする目的で研究を行った.パターンが形成される過程において,高分子網目の空間的な分布が時間的に発展する.この過程を共焦点レーザー走査顕微鏡によって時分割観察した.得られた結果を解析することによって,パターン形成には四つの特徴的時間領域があることが明らかとなった.収縮初期の時間領域では,ゲルは相似的にかつ均一に収縮する.次に,ゲル表面に高分子網目の濃度が高い厚い収縮層が形成される.この後,ゲルの収縮は一端停止する.最後に突然パターンが形成され,このパターンは徐々に消失する.また,この過程におけるゲルの直径や収縮層の厚さの時間依存性から,収縮初期は溶媒のゲル中における自己拡散定数によって支配されること,収縮中期には収縮層の弾性率や摩擦係数が重要であること,そして収縮終期はゲルの協同拡散定数で決定されること等が明らかとなった.現在,これらの点を実験的に明らかにするために,ゲルの力学的な性質,大変形下におけるゲルの挙動等について研究を行っている.
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