研究概要 |
本年度は数値繰り込み群法の高次元化に関連した研究を中心に行った. 古典統計系に関しては,転送行列の最大固有値状態波動関数に対する積テンソル構造を利用した2つのアルゴリズムによる研究を行った.いずれの方法も,波動関数を構成する局所テンソルを再帰的に改良していくものである.第一の方法(VDMA法)は,系の「縦方向」(転送行列の転送方向)に切れ目を入れた「縦密度行列」を作り,その固有ベクトルへの変換行列を用いて,系の縦方向への拡大にともなう局所テンソルの次元増大を抑えるものである.このVDMA法は2次元古典系に対する密度行列アルゴリズム(DMRG法)の自然な拡張となっている.第二の方法(SCTPVA法)は,問題を,局所テンソルを変分パラメターとする転送行列の最大固有値に対する変分問題と捉えるもので,旧テンソルを用いて構成される2つの行列から,その一般化固有値問題の解として新テンソルを求めるものとなっている.両手法ともに,単純な系への適用で,その有効性を確認した.2次元量子系に関しては,いわゆる鈴木・トロッター変換をして得られる異方的3次元統計系をVDMA法で取り扱い,異方性に関する外挿を併用することにより,基底状態物理量が計算可能である事を示した. 上記2つの方法(VDMA法,SCTPVA法)はそれぞれ一長一短があることもわかった.前者は安定性に優れており,臨界領域を除けば精度・収束性ともに良好である.臨界領域での精度の問題は,縦密度行列の固有値の減衰の問題と関連があり,今後の検討課題である.一方,後者は臨界領域でもかなり精度がよいものの,現状では安定性に難がある.現在,両者の融合等による改良を進めている.
|