本年度は数値繰り込み群法の高次元化に関連した研究(具体系への応用)およびアルゴリズムの基礎に関する研究を行った. 前年度の研究によって、転送行列の最大固有値状態波動関数に対する積テンソル構造を利用した「縦密度行列法」(VDMA法)が、一応のアルゴリズム的な完成をみた。そこで、この高次元数値繰り込み群法を3次元格子上の高分子系模型に適用した。立方格子のボンド上にモノマーの占有・非占有の自由度を置き、各格子点毎に許容モノマー配置に対する適当な拘束条件を課すことにより、3次元頂点模型として環状高分子模型を導入した。計算の結果、モノマー占有エネルギーをεとすると、k_BT【approximately equal】0.6εの温度で相転移(低密度相【tautomer】高密度相)が起きることを見いだした。さらに、この相転移に対する高分子トポロジーの効果を調べるため、環切断エネルギーを導入して「環状」制限を緩めたところ、この制限緩和によって相転移が消失することが見いだされた。一方、別のトポロジー制御として高分子環間架橋を導入したところ、この場合には相転移の消失が起こらないことが示された。 数値繰り込み群の基礎に関しては、密度行列固有値の漸近分布に関する研究を進め、可解系における固有値縮退度の漸近形の主部に対する物理的解釈を与えることに成功した。また、Andrews-Baxter-Forrester可解模型列に対して固有値分布漸近形の計算を行い、普遍漸近形予想を支持する結果を得た。
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