量子状態を空間的に離れた場所に送るには(量子テレポーテーションを実行するには)、あらかじめ量子的な相関を持った光子を共有しておく必要がある。連続的な期待値をとるオブザーバブルの場合には、スクイーズド状態をつくることで量子的な相関を用意できる。スクイーズド状態をつくるには大きな非線形光学効果が必要なので何らかの工夫が必要である。1998年にカリフォルニア工科大学で行われた実験では、光共振器を用いることで大きな非線形性を実現し、量子テレポーテーションの実験を行った。スクイーズド状態を発生するもう一つの有力な方法は、パルス光の高いピーク強度を利用する方法であり、本研究の目的は、フェムト秒パルスを使ってスクイーズド状態を発生し、さらに、パルス毎に量子状態を送る量子テレポーテーションを実現することである。光源として用いたのは、グリーンレーザー励起のチタンサファイアレーザーである。チタンサファイアレーザーはキット(部品の集まり)として発売されているものを用いた(Avesta製)。このレーザーを調整することにより、パルス時間幅48〜60フェムト秒、発振波長780〜795nm、300〜800mWのパワーの超短パルスを発生することができた。パルス時間幅はフリンジ分解の自己相関法で、スペクトルはPCに装着するカードタイプの分光器でリアルタイムにモニターできるようにした。これらの信号を見ながらレーザーを調整することにより、ハルス時間幅や発振周波数を選ぶことができた。さらに、β-BBO結晶を使って第2高調波を発生した。使用した結晶の厚さは、0.1mmと0.25mmで最大の変換効率は10%弱であった。
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