研究概要 |
分子の振動状態間の遷移に関して,ラマンスペクトル強度に円偏光依存性がある場合,ラマン光学活性(ROA)があるという.R0Aはらせんを含む分子において顕著に現れるが,らせん自体の振動が最も直接的な形で現れると予想される低振動数領域で,生体高分子のR0Aを測定することが本研究の目的である. 前年度,1/4波長板を機械的に回転させ,円偏光の向きを逆転させながら,フォトマルを用いた波長スキャンを行う方法を採用し,標準サンプル(CCl_4など)で検定を行った.その際いくつかの問題点が明らかになったが,現在は調整方法などの改良を進めている. 本年度は,poly-L-リジン水溶液の測定を試みている.この試料は,溶液条件によって,αヘリックス,βシート,3回らせん構造をとることが知られている.その構造は,高振動数領域のラマンスペクトルから容易に判定できるので,検定には最適である.現在結果を解析中である.一方, αヘリックス含量が多く,結晶対称性がよい(立方晶)インシュリンの結晶化を試みているが,ROAの測定に適するくらいに大型の結晶はまだ得られていない. 最終的に固体状態の蛋白質やDNAの測定をめざしているが,かなりの試行錯誤が必要であることが判明した.
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