研究概要 |
本年度の目標は我々の有限要素定式化を3次元問題へ拡張すること,並列計算の導入,現実的な問題への応用であった.これらに関して以下のような研究を行った. 1 3次元有限要素法プログラムの開発とその並列化 四面体一次要素を用いた3次元有限要素法プログラムを作成した.本研究のプログラムでは,四面体要素同士の3次元的な位置関係を解析して隣接する四面体とどの面で接するかなどの詳細な情報を構造体として保有するようにしてある.これは,流体と固体の境界部分に厳密に境界条件を導入するために必要なことである.なお,前年度に研究を試みた領域分割法では要素分割が非常に困難になることが判明したので,領域分割は行わないこととした.並列化には,剛性行列を作成して連立一次方程式を解く際に,並列化ライブラリ(PETSc : Baley et aL..,2001)を採用して対応した.約3000個の四面体からなる,複雑な表面形状をもつ対象領域例(固体)では,本研究で導入したPCクラスタによって4CPUの場合に1CPUの場合の約3倍の性能向上が測定された.性能向上度は四面体数(節点数)が増えるにしたがって改善すると予想されるので,今後研究を続ける予定である.なお,流体・固体境界を持つ場合のプログラムは完成が間に合わなかったのでこれも今後の課題とする. 2 現実的な問題への応用 グローバルな対象ではないが,複雑形状への自由度が大きい有限要素法が極めて有効になる対象として火山体での地震動がある.本研究で開発したプログラムによって,火山地形下に円形の流体領域が存在する場合の2次元の地震動シミュレーションというかなり現実的な計算が行えるようになり,単調な自由振動が長時問継続することなどを再現できた.これらの結果は日本地震学会秋季大会で発表した.火山現象も非常に興味深い重要な問題なので,グローバルな問題への応用と合わせて今後の研究課題としたい.
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