研究概要 |
地球内部地震波速度構造の研究では、地球内部構造が第1次近似的には球殻構造で表されるとして、深さ方向の地震波速度の不均質性が明らかにされてきた。1980年代に入って、地震波トモグラフィー解析の発達により、地球内部構造の横方向の不均質性が解明できるようになった。これにより、マントル対流による地球物質の移動状況やプレートの沈み込みの形態が大まかに把握できるようになった。一方、地震波は異方性の特徴も示す。地震波異方性の影響は観測波形にさまざまな現象として現れる。例えば、P波ではその速度が伝播方向に依存して変化し、S波では振動方向によって伝播速度が異なる。地震波異方性は、マントル対流によるマントル構成鉱物の選択配向が主な原因であると考えられている。従って、地震波異方性の分布を知ることができれば、マントル対流の対流パターンを描くことができる。 本研究では、実体波を含めた長周期地震波の波形解析や走時解析によって、地震波速度の不均質性や異方性の地域的な分布を求めるための考察をおこなった。まず、地震波速度の異方性と不均質性が地球振動のスペクトルや表面波の波形に及ぼす影響を調べた。その結果、異方性速度構造や不均質構造は、上下動のスペクトルや上下動地震記録に擬ねじれモードや擬ラブ波を励起することがわかった。そして、速度の不均質性に比べて異方性の影響の方が、擬ねじれモードや擬ラブ波を起こしやすいことを確認した。さらに、地球振動スペクトルの逆解析や擬ラブ波の走時解析により、地震波速度の異方性と不均質性の地域的な変化を、全地球規模を表す試みを行った。また、そのための逆解析法を開発した。さらに、P波の走時解析により、局地的な異方性速度の3次元分布を表すこともできた。これらの結果は,プレートテクトニクスやマントル対流を理解する上で役立つであろう。
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