本年度は、まず南極海の融解期の海氷・海洋上層データの解析を行い、簡略な海氷・海洋結合モデルとの比較・検討を行った。南極海East Antarctica沖で広範囲にわたり、オーストラリアの砕氷船R/V Aurora Australisから観測された海洋上層の水温データと、人工衛星のマイクロ波放射計(SSM/I)による日毎の海氷密接度データから、融解期の海洋混合層温度と海氷密接度との関係を解析した。その結果、海域に関わらず海氷野内部では30km平均程度の空間スケールで見ると、海氷密接度は海洋混合層温度と明瞭な負の相関関係があり、海洋表面での大気からの熱のインプットが増加するに従い、負の相関関係の傾きが大きくなることがわかった。この関係は、開水面から入る熱によってのみ海氷が融解すると仮定した海氷-海洋結合モデルからうまく説明でき、またこの関係からバルク的に視たときの海洋-海氷間の熱交換係数も見積もることもできた。 次に、上記の知見などに基づいて、海氷-海洋結合モデルの重要なパラメーターの値を決め、南極海全域を対象として、融解から結氷に至るまでの海氷・海洋場の気候値・年々変動の再現を試みた。その結果、開水面から入る熱によってのみ海氷が融解するとする簡略なモデルで、かなりの部分気候値や年々変動が再現できた。また、海氷・海洋結合系のアイスアルベドフィードバック効果が年々変動を決める重要な要因であることが示唆された一方、大気も結合させた系で考えることが年々変動を考える場合非常に重要であることが示された。
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