まず、今までに各国の砕氷船によって収集された南極海全域の海氷・海洋上層データと過去20年間のマイクロ波放射計による海氷密接度データから、海氷は開水面に入った熱によって主に融解し、海洋上層の熱と塩は概ねローカルバランスが成り立つことが示唆された。また、最も短波放射が大きい時期(12月)での海氷のアノマリーが、アルベドフィードバック効果によって次の結氷期にまで大きな影響を及ぼすことも示された。 これらの知見から、開水面から入る熱によってのみ海氷が融解するとする簡略な海氷-海洋結合モデルを作成した。このモデルは、観測された海氷密接度と海洋混合層の関係、及び海氷融解の季節進行を非常によく説明できる。観測データとモデルのフィッティングから、海洋-海氷結合系のキーパラメーターである海洋海氷間熱交換係数も決めることができる。バルクでみたときこの値は全南極域で季節を問わずほぼ同様な値となることがわかった。 さらにこの結合モデルは、海氷融解から結氷に至るまでの海氷・海洋場の気候値・年々変動を再現することができ、海氷融解期及び結氷期の年々変動は海氷-海洋結合系のアイスナルベドフィードバック効果によって決まる部分が大きいことが示唆された。すなわち、風の場が海氷の場に対して発散的であると、開水面より短波放射をより吸収し、海氷融解を促進し開水面を拡げ、ますます短波放射を吸収する、というポジティヴフィードバックが重要となる。風が収束的存場合は逆になる。しかし一方、大気も結合させた系で考えないと説明できない場合があることも示された。大気-海氷-海洋結合系士して、アイスアルベドフィードバック効果を考えることが今後の課題として提示された。
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