研究概要 |
本年度は,実測に見られる低周波変動と高周波変動との相互作用のデータ解析を行った。これは来年度に予定しているモデルにおける相互作用の研究の基礎データを得る目的である。用いたデータはNCEP/NCARの再解析データで,1980年から2000年の21年間を使った。データから各カレンダー日の平均をとり,さらに31日の移動平均をとることにより,気候値を得た。そこからの偏差をとり,それに10日のlowpassとhighpass filterで低周波擾乱と高周波擾乱とに分離した。 対流圏の低周波擾乱として,大西洋振動(NAO)と太平洋/北アメリカ振動(PNAO)がよく知られているので,それらと高周波擾乱との相互作用を研究した。ただし最近は北極振動(AO)という概念が提出され,そのほうがNAOやPNAOより基本的なモードであるという議論がある。そこでそのことをまず研究した。結果はAOは見かけであり,NAOとPNAOの無相関的な変動を解析手法の特性のために誤って基本モードとして抽出されるということが分かった。 以上の結果に基づいて,NAOとPNAOの研究が対流圏の変動の基本となることが分かったので,改めてそれらの研究に着手した。まずNAOとPNAOの振幅の時間変動を調べ,それらから高周波擾乱を回帰した。高周波擾乱はこれらの低周波変動を維持するように働いていた。また高周波擾乱の主要な変動を調べ,そこから低周波擾乱を回帰すると,NAOとPNAOが出現した。 これらからNAOとPNAOなどの低周波擾乱と高周波擾乱は互いに相互作用しながら,低周波擾乱を維持していることが分かった。
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