研究概要 |
福島・虎谷は、平成12・13年度に海色観測衛星センサSeaWiFSの412および443nm帯のデータを用いた経験的黄砂エアロソル指数(Dust Veil Index,以下DVI)を提案し、放射伝達シミュレーションおよびDVI衛星画像作成による有用性の検証を行った。DVIの大きな特徴は、海域のみならず砂漠域を含む陸域の衛星データにも適用できることと、従来から広く使われているTOMSエアロゾル指数(AI)に比べ解像度が高い(最高で1km程度)ことである。平成13年春のACE-Asia/APEX-E2エアロゾル集中観測期間に同期してSeaWiFSデータを毎日処理してDVI画像を作成し、TOMS/AI画像とともに準リアルタイムでホームページに掲載したが、これは地上観測のサポートおよび事後の観測データの解析に役立てられた。本年度は放射伝達シミュレーションを用いてDVI画像上で「ノイズ」として現れる「雲」画素の識別手法を高精度化し、2001年春のDVI画像の再処理を行い、データセットを作成して解析に供した。 一方鵜野は、これまでに開発した化学天気予報システムCFORSを用いて黄砂、BC/OC, Sulfate, Sea Saltの各エアロゾルの光学的厚さを予測するシステムを作製しており、本年度は福島と共同でDVIとCFORS予測光学的厚さとの比較を行った。その結果、DVIと黄砂光学的厚さの予測値との間にはほぼ線形の関係があることが示されているが、その成果については現在論文としてとりまとめている所である。 一方福島は、スクリプス海洋研のFrouin, Mitchellらと協力してACE-Asia観測の一環として行われた日本海における海水分光反射率およびエアロゾル光学厚さの船舶観測とSeaWiFSによる衛星観測データの比較を行った。その結果、サブミクロンサイズの小粒経吸収性粒子が衛星で観測された短波長域での吸収に大きく寄与しているとの結論を得た。この成果についてはJGRに投稿し、印刷中である。 本研究を通じ、当初の目標の一つである「海色衛星データを用いた黄砂エアロソルの検知」については目標を達成できたと考えているが、「黄砂濃度の絶対量の推定」については明確な形での手法は示せなかった。しかしその前段階である「黄砂の光学的厚さ」とDVIついては地表面種別により多少異なるものの概して線形の関係にあることが示されたので、さらに研究を進める予定である。
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