本研究には、2種類の人工衛星データを必要とする。1つは海面高度データであり、もう1つは海上風データである。前者は、海面での地衡流を計算するために必要であり、後者は海面でのエクマン吹送流を計算するために必要である。前者については、Kuragano and Shibata(1997)によって格子化されたデータセットを利用した。このデータは時空間に対して最適内挿法を適用して作成されたデータである。海上風データについては、WOCEで作成されたERS-1の海上風データを利用した。両方のデータを用いて海面での流速場を推定した。その際に、赤道上での流速は、萩谷・久保田(1999)での計算方法を適用して算出した。このようにして得られた流速場を用いて、1年間だけシミュレーションを行い、浮遊物の移動について調べた。その結果は、1年間の間に多くの浮遊物はエクマン収束帯に集まることがわかった。この特徴は従来調べられていた北太平洋だけではなく、北大西洋や南太平洋でも共通した現象であった。また、独自の海上風データセットを作成する目的で、海上風データの統計的性質を検討した。具体的には、ECMWF海上風データの日平均値から気候学的月平均値を作成し、両者の間での標準偏差を計算した。これを気候学的月平均値の誤差とした。また、ECMWF海上風データから非相関スケールも算出した。さらに、一定期間の間に格子に入る観測データを平均し、その平均値を真値として観測誤差を算出した。以上の統計量を用いた最適内挿法を利用して、ERS-1の観測データから1日ごとの1゜格子データセットを作成した。その結果はWOCEで提供されているデータセットよりも優れていることが明らかになった。
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