Kuragano and Shibata(1997)によって作成された5日間隔、1°格子のTOPEX/POSEIDON海面力学高度データから地衡流速場を、またNCEP再解析データ(NRA1)の風応力データからエクマン流速場を作成した。データの使用期間は1993年から1999年までの7年間である。この2種類と、それを合成した3種類の海面流速場を用いて、海洋浮遊物の全球におけるシミュレーションを行った。初期状態として、海面浮遊物を全球の緯度・経度10°ごとに配置した。その結果、すべての海で中緯度域に浮遊物が集積することがわかった。さらに、インド洋と南大西洋では、北太平洋のようなベルト状の分布ではなく、中央部の特定の狭い海域に集中して浮遊物が存在することがわかった。この原因を調べるために、海上風場と地衡流場を詳しく調べた結果、南大西洋の集積域は、海上風が非常に弱いことがわかった。また、インド洋では、東岸付近で南風、西岸付近で北風が卓越していることがわかった。これは中央部で強いエクマン収束があることを示唆している。さらに、北太平洋ではエクマン収束域に北太平洋海流のような強い地衡流が存在するが、インド洋や南大西洋にはエクマン収束帯に必ずしも強い地衡流が存在するわけでは無いこともわかった。このような特徴が原因で、南インド洋や南大西洋では、浮遊物が比較的狭い中央部に集中して集積するものと考えられる。
|