本年度は、昨年度までに作成した海面流速場の信頼性を調べるために、漂流ブイのデータを収集して、漂流ブイデータから計算された海面流速場と、本研究によって人工衛星データをもとに作成された海面流速場と比較検討した。用いたのは、海面での流れを直接反映している、抵抗体が外れている漂流ブイのみである。比較の結果、基本的な流れのパターンは両者で一致したが、その定量的な値は大きく異なっていた。その理由として、衛星データは、広い範囲の平均的な値であること、あるいは漂流ブイは強流帯に収束しやすいことなどが考えられる。また、北半球と比べて南半球での比較結果は、あまり良くなかったが、これは南半球での漂流データの密度が低いことが、理由として考えられる。さらに、ゴミを多く排出していると思われる大都市をピックアップして、大都市から放出されたゴミの移動についても検討した。その結果は、海域によって、大きく異なり、日本付近で排出されたゴミは、その移動の特徴は2種類に分けられ、1つは黒潮・黒潮続流・北太平洋海流に乗って、短期間に東方に移動し、もう1つは黒潮反流に乗って南西方向に移動することがわかった。また、漂流ブイデータのモデルへの同化についても検討を行った。同化方法は修正法である。同化によって、1ヶ月後のブイの位置は、3°程度の誤差で予報できることがわかった。また、同化結果は、同化に用いられるブイデータの密度に大きく依存し、同化データが豊富な海域では、同化による貢献は非常に大きいが、密度が低い海域にブイが入ると急速に予報精度が落ちることがわかった。
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