極運動は主に年周極運動と約14ヶ月周期を持つ地球自由振動であるChandler Wobble(以下、CW)から成るが、このうちCWを励起する14ヶ月近傍の時間スケールの赤道軸まわりの大気相対角運動量(風励起)の振る舞いを、気象庁(JMA)、NCEP(米国立環境予測センター)、およびECMWF(ヨーロッパ中期天気予報センター)の3つの全球解析データに基づいて明らかにすることが本研究の主目的である。そこで、風励起と観測される極運動から運動方程式を通じて逆算された励起関数(以下、観測されるCW励起)のそれぞれのPower Spectra、及びそれらの間のCoherence及びPhaseなどをMulti-Taper Methodなどを用いて算出した結果、1)JMA、ECMWF、NCEPの各風データはそれぞれ固有の年周極運動を励起するが、JMAデータによるそれが観測される年周極運動に最も近いこと、2)CWの風励起では、JMAデータが観測されるCW励起より過大を、NCEPデータが極めて過小を、そしてECMWFデータが前2者の中間の大きさを示し、物理的には、ECMWFデータが最も観測されるCW励起に近いこと、などがわかった。しかし、以上の全球解析データは気象観測値と予報モデルとのデータ同化過程で初期化・非初期化の2種生じ、このうちJMAデータが非初期化、NCEPデータが初期化で、一方ECMWFデータには初期化・非初期化の2種存在する。そこで、これらの違いがCW励起に及ぼす効果をECMWFの2種のデータに基づいて見積もった結果、初期化・非初期化の違いがCW励起に及ぼす違いは極めて小さいことが判明した。しかし、他の種々の解析結果を考察すると、この小さな違いはECMWFデータの品質管理の良さにも大きく依存している可能性も示唆された。
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