極運動におけるChandler Wobble(以下、CW)は地球の最も長い周期を持つ自由振動であるが、その励起源が何なのかは、発見以来およそ100年間、まだ定説に至っていない。最近、本研究代表者は、気象庁の数値予報システムにおける全球気象データなどの解析から、この励起源が風であることを主張してきたが、解析に用いた数値予報システムにおける気象データには初期化データと非初期化データの2種あることから、励起評価がこれらのデータの性質の違いに依存している可能性が指摘された。 そこで、1980年-1994年の15年間におけるヨーロッパ中期天気予報センター(ECMWF)の再解析による初期化・非初期化の二つのデータに基づいて、CWに及ぼす大気変動とりわけ風の寄与を評価した結果、極めて高い信頼度でCWの励起源は風にあることが再確認された。この事実は最近提唱された海洋励起説を根本から覆すものである。さらに興味あることに、風の南北成分などに由来する風の寄与のパワースペクトルにCW周期の14ヶ月周期近傍に顕著なピークが存在し、これがCW励起に関与していることが判明した。また初期化・非初期化の違いは極運動の年周変化には有意な違いをもたらすが、CWへの影響はほとんどないことも判明した。
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