磁気圏サブストームの時に起きる磁気圏尾部での磁気リコネクションにおいては、磁気圏尾部の電流層の厚さが、イオン(プロトン)の慣性長より薄くなる。従って、イオンは磁力線からの凍結が解け、一方、電子はまだ磁力線に凍結している状態になる。イオンと電子の結合が解けた状態は、その端的な現象として、ホール電流を形成し、この電流によるホール効果は、磁気リコネクションの効率を高める作用がある。観測的にホール効果がどれだけあるかを検証することは、磁気リコネクションのメカニズムの解明の1つの課題である。この研究では、人工衛星Geotailによる磁場とプラズマの観測から、ホール電流系の構造と電流の強さ(電流密度)に重点をおいて、ホール効果の寄与の研究を行ってきた。磁気リコネクションを子午面内の2次元構造とすれば、4つの電流ループが形成されるはずである。イオンと電子の速度分布関数の解析から、電流に寄与するものは、磁力線に平行と反平行とに流れる電子であることが特定され、電流密度を求めた。また、その電流により作られる磁場の変動を特定した。特筆すべきは、4つの電流ループについて、すべてを検証することができたことである。さらに、このホール電流のループが、どのような構造をしているかについて、解析を進めた。ホール電流ループは、磁気圏尾部のプラズマシートとローブの境界領域に薄い2重層を形成していることがわかった。ここで、粒子コードの磁気リコネクションのシミュレーション結果との比較から、電流層の厚さは、イオンの慣性長程度であることがわかった。さらに、シミュレーションにより、どのような3次元電流系ができるかについて研究をすすめた。
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