ストーム堆積物を特徴づけるハンモック状斜交層理の波長とストーム時の海底付近での振動流の軌道直径との関係を再検討し、ハンモック状斜交層理の波長が過去に発生したストームの規模を反映する尺度の1つとして有効であることを明らかにした。特に、これまでに報告されている実験結果ならびに現世陸棚における観測結果の整理と、地層記録の再検討を行った。その結果、沖合方向に向かってハンモック状斜交層理の波長が短くなる傾向が広く認められることが明らかとなった。このような傾向は現世の陸棚で形成されたハンモック状ベッドフォームでも認められている。さらに、1枚のストーム砂層に注目すると、下部から上部に向かって波長の値が小さくなる傾向が広く認められる。この波長の値の減少も振動流の軌道直径の減少に対応しているものと解釈される。一方、ストームの規模が大きいほどcoastal set-upの程度が増大し、その結果、より多量の堆積物が沿岸域から沖合へ運搬されていることが考えられる.その結果、ほぼ同一の陸棚上で形成されたストーム砂層を比較した場合、厚い砂層ほど当時の海岸綜に対してより直交する沖向きに運搬されて形成されており、このような傾向に対応して波長の値も大きくなることが明らかとなった.さらに、過去6億年に形成されたハンモック状斜交層理に波長の時間的変化を検討した。その結果、過去に繰り返された温暖な時代ほど、波長の値が大きく、ストームの規模が増大していたことが、明らかとなってきた。ただし、このようなストームの増大は、混暖期における気温や海水温の最大時期よりも前か後に発生しており、将来地球環境が温暖化に向かった場合、温暖化の過程でストームの規模が最も大きくなる可能性が考えられる。
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