地殻およびマントル物質が塑性変形すると結晶内部辷りにより集合組織(結晶方位選択配向)が形成され、弾性波に対して異方性を示すようになることが知られている。動的再結晶によって、集合組織がどのように改変されるかを調べるために、理論的・数値的解析を行なうとともに、天然の変成・変形岩組織の定量解析を行なった。また、高温高圧実験による動的再結晶組織の再現に着手した。 (1)多結晶体の動的再結晶による結晶粒径分布の発展を、簡単な核形成-成長モデルをもちいた統計理論により解析し、平均粒径と粒径分布の核形成速度と粒成長速度(粒界移動速度)によって表されることを示した。天然の石英・オリビンの粒径分布の計測結果は、理論的に予測された分布パターンと調和的である。亜結晶粒子回転モデルによって、平均粒径の応力および温度依存性を求めた。無次元化して得られたユニバーサルな関係式は、既存の変形実験データをよく説明する。これらの成果は、平成15年度の材料科学系国際学会THERMEC'2003において発表される予定である。 (2)実際の地殻・マントル物質(石英、オリビンなど)をもちいて再結晶作用と結晶方位定向配列および、転位下部組織の関係を調べるために、高温高圧3軸変形試験に着手した。本年度は静岡大学理学部に既設の固体圧変形試験機MK65Sの圧力ゲージの改修と、制御系の改良にほとんどの時間を費やし、本格的な実験は今後に残されることとなったが、瑪瑙をもちいた予備実験において、天然の変成岩組織に類似した石英の再結晶組織を再現することに成功している。
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