研究概要 |
テフラ層は精密な時間示標層として、地質学の精度と確度の向上に欠かせない。本研究では、魚沼層群をはじめとする新潟地域の下部更新統のテフラ層序をより精密なものとした。とくに魚沼層群中部層相当層には多数の厚い広域テフラ層が挟在するが、そのうちSK110,SK100,HD20およびOmigテフラ層と、房総半島黄和田層のKd25,Kd24,Kd18およびKd8テフラ層との広域対比を確立した。また鮮新統のテフラ層序についても、新潟地域において基本的なテフラ層序を確立するとともに、それらと北陸地域などとの対比を行い、新たに西山層のThw-3と氷見層群のYT4テフラ層の広域対比を行った。また従来、ほとんど検討が行われていなかった中新統のテフラ層の対比についても、新潟地域の内須川層と野村層の間で対比可能な4層の広域テフラ層を見い出した。これらの結果は火山性堆積物が多い日本列島において、広域テフラ層による同一時間面の設定が可能であることを、中新世にまで遡って具体的に実証したもので、地質学における精密対比の方法論を確立したことにもなる。これらの成果は、今後のテフラ研究の展開にとどまらず、微化石層序や年代論などとも複合して、地質学や環境史研究におおいに寄与しうるものと考えている。
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