研究概要 |
泥質変成岩の部分溶融により形成される花崗岩質メルトの量の定量的解明のため,今年度の研究計画としては(1)野外調査,(2)粗粒な岩石を少ない汚染量で粉砕する方法の確立,(3)鉱物の微量元素分析の下準備,(4)高温高圧実験の下準備,が主な予定であった.(1)は日高変成帯と飯豊山地の調査を行い,日高では紅柱石を含有するペグマタイト脈を発見,飯豊ではザクロ石黒雲母片岩を発見した.(2)は,設備備品費・消耗品費でジョークラッシャーをはじめとして粉砕室を整備した.花崗岩・はんれい岩を交互に粉砕し,XRFやICP-MSで分析し,検討の結果,少ない汚染量で粉砕できるルーチンを確立する事が出来た.(3)は,EPMA(WDS,EDS)を用いてB,F,Cl,V,Co,Cu,Zn,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Sn,Cs,Ba,Ta,Pb,Nd,Smの定量ルーチンワークを行った.このうち半分以上はほぼ測定方法を確立できたが,残りは現在さらに作業中である.(4)は,溶接する装置の材料がそろったところで,これから組み立てるところである.来年度は予定通り高温高圧実験を行えると考えている. 現在までの具体的な研究成果として,羽越地域からスピネル+石英が共生するグラニュライトゼノリスを発見したことが挙げられる.この発見によりこの地域の下部地殻の温度構造が解明されたとともに,全岩化学組成分析とモデル計算から,おおよその溶融量を見積もることが出来た.この成果は,7月に東京で開かれた国際学会,さらに1月にオーストラリアで開かれたSタイプ花崗岩に関する国際学会で発表した. 成果の論文としての公表は裏面に示した物の他に,Sタイプ花崗岩に関する論文を投稿中であり,さらに前述のスピネル+石英グラニュライトについては国際誌に2編に分けて投稿する所である.
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