研究概要 |
本研究は,天然の花崗岩・ミグマタイト・変成岩に注目し,変成岩の変成岩岩石学的解析とともに,花崗岩の火成岩岩石学的解析を関連づけて行うことにより,下部地殻の部分溶融現象と花崗岩マグマの生成量に関して定量的解明をめざすものであった. 研究期間初年度の目標の1つは,粗粒な岩石でも汚染が少なく効率的な粉砕が出来る環境を整備する事であった.岩石の全岩化学組成を測定するには,一般に岩石を粉砕する必要があるが,粗粒な岩石ほど,より多量の試料を粉砕しないと鉱物粒子による化学組成の不均質性が無視できなくなる.粗粒な岩石ではキログラム単位の岩石を粉砕する必要も生ずる.従来この作業は乳鉢での粗砕きと四分法を繰り返す事により必要量(数十グラム)の試料を得ていた.このため1サンプルの粉砕に,半日を要することもあった.今回,ラボ・ジョークラッシャ,メノー製粉砕ボールや,粉砕に関わる消耗品を購入し,ラボの整備を行った.これにより,粗粒な岩石でも試料間の汚染が殆ど無く,効率よく試料を粉砕できる環境を整えることが出来た. 具体的な研究は,2年間とも日高変成帯,羽越地域などについて行った.特に,羽越地域においてスピネル+石英共生を日本列島で初めて発見し,超高温変成岩が島弧の環境で形成されうることを示したことは重要な成果であった(Shimura et al.,2000, 2001で学会発表;Shimura et al., 2002,印刷中).さらに,このような地殻構成岩石と火成岩類との成因関係を定量的に議論出来るようになってきた(加々島・志村,2001).日高変成帯では変成岩-ミグマタイト-花崗岩の関係が整理され(志村,2000),さらにコランダム-紅柱石-電気石を含むペグマタイト脈が発見され,日高変成帯の熱史解明の次段階への発展の契機をみいだした.
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