研究概要 |
平成13年度の科学研究費補助金の支給を受けて,研究代表者の研究グループは,愛媛県や岡山県等に分布するトゥファ堆積物を対象に,主に以下の3つのテーマで検討を進めた. 1.トゥファ表面に生息するシアノバクテリアについて.従来,シアノバクテリアはトウファの堆積や組織に何らかの影響を及ぼすと考えられていたが,今回のバイオマスと群集の検討結果から,方解石の沈殿を誘導していないことと,縞状組織の形成に関与していないとが明らかになった. 2.トゥファの同位体について.縞状トゥファのラミナに沿って,高精度(0.2mm間隔)で酸素炭素安定同位体比の分析を行った結果,酸素炭素安定同位体比は水温の季節変化に支配され,極めて規則的(夏に低く,冬に高い)に変化することを判明した.また,炭素安定同位体比は地下での現象に支配され,特に冬期に活発になる自然換気により,値が高くなることが示された. 3.トゥファに認められる褐色バンドについて.岡山県新見市などの縞状トゥファ試料には「年縞」のほかに,褐色を呈する幅0.1mmオーダーのバンドが認められる.この褐色バンドはSiやAlのX線強度曲線のピークと一致し,層位学的に対比すると,降雨イベントの時期に一致することが判明した.さらに,降雨後の増水時に観測を行ったところ,水中の県濁物の量が増加していたことも確認された. 本年度の研究により,トゥファの生成条件,縞状組織の生成機構,古環境解析法について,あらたな知見が数多く得られ,古環境研究の題材としてのトゥファの重要性が確認されることになった.特に,降水量を高精度で記録する試料としてのトゥファの重要性は高く,来年度以降の重要な研究テーマを見出すことが出来た
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