研究概要 |
平成12年度の研究実績の概要な以下の通りである. 1)四国中央部の愛媛県新居浜市国領川ルートおよび高知県土佐山村汗見川ルートの三波川変成岩を対象として,精密な野外調査を行った.その結果,三波川変成帯の緑泥石帯およびザクロ石帯においては,塩基性片岩-緑色珪質片岩-珪質片岩の順に累重する海洋プレート層序が識別されることが明らかになった.一方,黒雲母帯では,緑泥石帯およびザクロ石帯で見られたような海洋プレート層序は認められなかった.このことは同一の深部付加体においても,アンダープレーティングの付加プロセスが付加深度に応じて異なっていることを示唆している. 2)備品として購入した携帯型コアピッカーも使用して,系統的な試料採取を行った.採取したすべての試料の岩石薄片を約300枚作成し,既存の偏光顕微鏡を用いて岩石記載を行った. 3)1)で識別された海洋プレート層序を構成する岩石の構成鉱物のモードを既存のポイントカウンターを用いて計測した.その結果,海洋プレート層序を構成する岩相の構成鉱物の量比,特に緑色鉱物,は漸移的に変化することが明らかになった.このことは識別された海洋プレート層序が三波川変成作用後もそのまま保存されていることを示唆している. 4)復元された海洋プレート層序に基づき,三波川変成帯の深部付加体としての地質構造の推定が可能であることが明らかになった.
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