研究概要 |
炭素化合物が地球深部の高温高圧の条件下でどの程度安定であるか、またその起源が生物活動以外の無磯的な化学反応に由来する可能性があるかを検討する目的でこの研究を行っているが、平成12年度中における主な研究結果は以下の如きである。 (1)岩石中に包有されるCO_2,CO,CH_4及びC_4H_<10>までの気体状炭化水素の分析法を確立した。またこれらの成分が岩石中で石墨と平衡にある場合には熱力学的にその温度を推定できるはずで、その計算のために必要な活動度係数を求める便法も開発した。 (2)上記の方法を火成岩岩脈とそれが貫入している頁岩に適用し、岩脈周辺の温度分布を検討すると共に、その中に含まれている炭化水素の挙動を調べた。その結果、幅が数メートルの岩脈では周辺の頁岩に含まれる炭化水素にたいする熱の影響は高々1-2メートルにすぎないことが分かった。この研究には主に鹿県島県の甑島の試料を用いた。 (3)本邦の代表的な広域変成帯(三波川帯と領家帯)を構成する泥質起源の変成岩中の炭化水素の分析を行った。その結果、炭化水素にたいする熱の影響は均一化されてしまい、鉱物学的に推定された温度条件を必ずしも反映していない。 (4)衝撃波によって惹起される有機化学的の反応を検討するため。宇宙での存在が認められているフェナントレンに衝撃銃によって反応を起こし、その生成物を分析したが原材料より低分子のもの、高分子のものが数十種確認された。 (5)宇宙、とくに隕石、惑星などにおける化学種の起源と分布に対する衝撃波の役割に関する従来の我々の研究を総括紹介すると共に、従来、公表されている内外の文献を渉猟し、総説としてまとめた。その結果は2001年6月、アメリカ物理学会で発表、出版の予定。
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