本年度はおもに安達太良山起源の酸川ラハール堆積物と沼沢火砕流堆積物の埋没材の現地調査を実施した。 酸川ラハール堆積物の調査では山元(1998)のL1に比定される堆積物本体の上位に6層の泥炭層を介在する泥流堆積物が確認できた。これらの泥炭層のうち少なくとも3層に年輪試料として使える埋没材が含まれており、一部の材と大型植物遺体についてサンプリングを実施した。埋没材にはコナラ属など多くの樹種が含まれており、年輪解析での編年は今のところできていないが、花粉分析、14C年代測定を併用して火山活動史と植生変遷を明らかにする予定である。 沼沢火砕流堆積物中の埋没材については従来の文献に記載のあった福島県内の炭化材出土地点とその周辺では木材の確認ができなかったが、新潟県内での情報を新潟大学の高濱教授から得て試料を得ることができた。今のところ年輪解析ではこれらの試料の同一年枯死の確認が得られていないが、さらに若干の試料を採取して年輪による同時代性を確認してウイグルマッチングにより噴火実年代を推定する見通しがついた。 なお、研究成果の一部は、第1回高精度14C年代測定研究委員会公開シンポジウム(2002年3月、日本大学文理学部)において「縄文時代の高精度編年に向けて-年輪年代学からの取り組み-」として発表した。
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