研究概要 |
2000年6月および10月の2回にわたり,沖縄本島外洋にて,琉球大学海洋実験船上からプランクトンネットにより放散虫サンプルを採取,雑多なプランクトン群集の中から放散虫をピックアップし生態観察およびPCRクローンニングを行った. 1.生態観察 倒立顕微鏡を用いた標準的な可視光による生態観察のほかに,落射型蛍光顕微鏡・共焦点レーザー顕微鏡等を使用して,葉緑体と核の自家蛍光を観察することによって,共生藻の分布と核の位置確認をおこなった.いくつかの放散虫種について観察を行った結果,放散虫は種によって共生藻を保持している部位が異なる.属種を越えてその多様性は大きく,それは系統分類上の制約を受けていないように見える.これは,珪酸質の殻の形態をもとにした分類と,共生藻の獲得という系統進化上の事件(分子系統)とが整合一致しない可能性を示すと考えられる. 2.PCRクローンニング PCRクローンニングについては,上記生態観察をおこなった数種について試みた.共生藻を持つものは,単一種について数十個体を単離し,骨格を切断,内部にある共生藻をかきだしてPCRを試みた.増幅しようと試みている部位は,18S-rDNAで,現在まで,1種,Didymocyrtis tetrathalamusについて18S-rDNAの領域内約600bpを読みとることができた.次年度以降はさらにPCRの手法について改善し,多くの種で18S-rDNAの塩基配列を読みとる努力をする.
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