研究計画に沿い、日本海側における鮮新統〜下部更新統産腹足類化石について検討した。今年度は特に新潟県の鍬江層の地質学的調査とそれに基づいて多くの保存の良い軟体動物化石を採集し、石川県の大桑層、北海道南部の瀬棚層、富川層よりできるだけ保存の良い腹足類化石を採集した。 新潟県新発田市周辺の鍬江層上部は石灰質ナンノプランクトン化石により、ほぼ鮮新世中期に堆積した事が明かとなった。17産地より210種の軟体動物化石が採集、識別された。35種もの暖流系種を含み、大桑・万願寺動物群の特徴種も多く含むことが明かとなった。また、自生的な産状を示す群集は、下部浅海域に生息する寒冷な種によって占められ、外洋性暖流系種の多くは他生的産状を示す。採集された腹足類化石中にはこれまで知られていないエゾバイ属の2種を含む105種もの腹足類が認められた。 石川県の大桑層や北海道南部の瀬棚層、富川層からは、これまでにも多くの軟体動物化石を採集している。しかしながら、腹足類に注目して採集していなかったため、胎殻を欠く標本が多かった。今回、大桑層の4産地、瀬棚層の1産地、富川層の4産地より保存の良い腹足類化石を多数採集し、処理、整理を行った。現在本研究で購入したデジタルHDマイクロスコープを用い、鍬江層の標本も含めて、胎殻の観察と大きさの測定を行っている。幼生生態については、エゾバイ科、アクキガイ科の多くの種を含め、ほとんどの絶滅種は非プランクトン栄養幼生を持つことが明らかとなりつつあり、分布範囲が地理的に狭い範囲に限られることとも調和的である。また、非プランクトン栄養幼生の胎殻の大きさの差異と地理的分布範囲に関連性がないか現在検討中である。
|