研究概要 |
研究計画に沿い目本海側における鮮新統(8160)16下部更新統産腹足類化石について検討した。今年度は北海道の富川層と瀬棚層から補足的な採集を行った。その後、これまでに採集された化石標本を東大、東北大学に保存されている模式標本と比較し、分類同定を行った。分類された化石も含め、エゾバイ科、アクキガイ科の分布を化石および現生種が日本海側、太平洋側に限定されるのか、'両側から産出するのかに基づいて、その分布パターンを検討した。また、平成12年(8160)1613年度に採集した腹足類化石の胎殻をデジタルHDマイクロスコープにて観察し、計測を行った。 その結果、鮮新統(8160)16下部更新統産のエゾバイ科、アクキガイ科の分布については8つの分布様式が識別された。また、Ancistrolepidinae, Neptunea, Buccinumのように下部浅海帯以深に生息する分類群(L群)とNucella, Ceratostoma, Ocinebrellus, Lirabuccinumのように上部浅海帯以浅に生息する分類群(U群)とでは、分布様式が異なることが明らかとなった。L群中には絶滅種、絶滅個体群が多く(36種中20種)、日本海側に化石、現生とも限られる種が認められる。一方、U群では現生種が目本海、太平洋両側に生息する種が多く(10種中7種)、絶滅種は3種と少ない。 胎殻の観察から、上記の分類群はすべて非プランクトン栄養型の幼生生態を示すことが明らかとなった。また、現生種28種中19種が非プランクトン栄養型、絶滅種でも13種中10種が非プランクトン栄養型の幼生生態を示す。すなわち、非プランクトン栄養型の幼生生態を示す種が現生種でも、絶滅種でも卓越し、幼生期の生態は絶滅の内的要因とはならないように思われる。
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